この日のライブ録画は、伴奏のピアニストさんがYou Tube公開はNGということでしたので、後日同じ場所で同じ曲を収録し直しました。ここではそちらの演奏を公開いたします。以下の曲名をクリックすると演奏を聞くことができます。
コンサートでは、以下の内容の解説をはさみながら、演奏いたしました。
①バリックヴァイオリンとスコルダトゥーダ
今日はペリオード奏法ということで、古楽器を使って、作曲された当時の時代の演奏スタイルを再現して演奏します。
私が持っているヴァイオリンですが、普通のヴァイオリンといろいろと違います。
「ガット弦・顎当てと肩当てが無い。指板の長さが違う・弓は折れそうなくらい細い」
それから、とても珍しいスコルダトゥーラという調弦法を用います。「ヴァイオリンは普通、・・・・・」
なので、その曲ごとに調弦する時間をいただきます。場合によっては曲の途中で調弦が狂ってしまうこともあり、曲を中断して調弦をやりさなければならないこともあるかもしれません。
②パイプオルガン
今日はせっかくこのパイプオルガンも聴いていただいていますので、少しこのオルガンについてもご紹介させていただきます。このオルガンは、大きな教会や大ホールなどにあるパイプオルガンとは違って、positive organと言います。芦塚先生が、「本物のPipeorganの音を一般にも聴かせたい」「ワンボックスカーで運べるPipeorganがあったら良いのに」・・ということで、黒田Organというところに設計案を出して、試験的に作ってもらったものです。少人数の弦楽オーケストラや、今回のようにソロ楽器とのアンサンブルを前提に作られた小型のオルガンで、音色もとても柔らかく、このくらいの広さにちょうど良いですね。芦塚先生が設計のアイデアとして、「理論気柱」という概念で、管を閉管にする事で、pipeの長さを半分にしています。それでコンパクトなパイプオルガンが実現されました。実はこれ、3つのパーツに分解できて、持ち運びが出来るようになっています。それでもやはりそれぞれは結構重たいです。つい二年半前にも教室のお引越しがあり、このオルガンも自分たちで担いでここに運びました。楽器だけは引越し業者さんにはたのめませんのでね・・・。今回は、曲のイメージに合わせて、オルガンとチェンバロを弾き分けることにしました。次の曲はオルガンの伴奏でお聞きください。
③ロザリオのソナタ
ロザリオのソナタは、別名ミステリーソナタとも呼ばれ、ミステリーと言っても「謎の」と訳すよりも、「神秘的な」くらいの方が、意味があっているかと思います。
マリア様の生涯の15の場面を表していて、それぞれにタイトルと絵がついています。絵はプログラムに載せておきましたので、是非御覧になりながらお聞きください。ロザリオのソナタは全部で15曲プラス1曲無伴奏のパッサカリアで構成されています。先程説明したスコルダトゥーラという調弦で、それぞれの曲で全部違った音に調弦します。なので、楽譜に書いてある音と実際に出る音が違う、という、訳のわからないことになりますが、聴いている分には独特の美しい響きになって、その複雑さは分からないかもしれません。では、次の曲に合わせて調弦をやり直します。
④チェンバロ
このチェンバロは、ルッカースモデルと言って、チェンバロ制作の名工として知られるアンドレアス・ルッカースが、1640年に制作したモデルの復刻版です。この、タツノオトシゴのような文様は、ルッカース一族の所謂家紋のように、ルッカースを象徴する文様として施されており、その装飾もこの復刻版で再現されています。チェンバロは、ピアノが誕生する前の時代に、王侯貴族などしか所有出来ない超高級品でした。ピアノは弦をハンマーで叩いて音を出すのに対して、チェンバロは爪で弦をはじいて音を出します。とても高貴な感じのきれいな音ですよね?
⑤通奏低音とは?(リアリザチオンの説明)
今日よく演奏されているビタリ‐のシャコンヌは、フェルディナンド・ダヴィッドという人が初めに現代の書法にピアノ伴奏版に書き直したものを、さらにシャルリエという人がヴァリエーションの順番を入れ替えたり、一部を省いたり、ヴァイオリンパートに手を加えて派手派手しくアレンジしたりしたものです。この曲をご存知の方は、この一般的に知られているアレンジされた版のシャコンヌだと思います。本日のコンサートは、その時代の様式をなるべく忠実に再現するペリオード奏法ということですので、楽譜も原典版を使います。と言っても、原典版のシャコンヌは出版されていませんので、ヴィタリー本人の書いたオリジナル楽譜の写本から、つまり大元の大元から掘り起こして作った楽譜で演奏いたします。
バロック時代の楽譜は、メロディと低音の二声部で書かれていて、オルガンやチェンバロの右手の和音は、音符を書きません。その代わりに現代のjazz-cordのように、数字で和音を書き表しています。昔のCembalo奏者は、Baßの音とその上に書かれた数字を見て、即興で和音を付けて演奏をしていました。
この和音を示す数字は、作曲家本人が書きますが、このChaconneの原本に限っては、後から素人が数字を付けたとしか思えないような、間違いだらけの楽譜で、そのままでは演奏不可能なものでした。今回は、その間違いを訂正しながら、しかも、元の音楽はなるべくそのままに、オルガンで演奏できるよう、私の師匠の芦塚先生に作っていただきました。この、数字付き低音譜から、音符に書き起こすことを「リアリザチオン」と言います。また、バロック時代の慣習では、装飾音は演奏者本人が自由に即興演奏していましたが、今回は私が芦塚先生の指導の元、自由な装飾音を書き加えてアレンジしました。
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